橘 凛Abyssal Light Gladeを始めたのは2017年の秋のことです。それまで6年間、東京・南青山の広告写真スタジオ「Monochrome Arc」で大判フォーマットの撮影を担当していましたが、クライアントの意図に応えることと、自分が本当に記録したいものとの間にある距離が、少しずつ無視できなくなっていきました。独立を決めたのは、ある建築家から「竣工写真ではなく、建物が生きている写真が欲しい」と言われた一言がきっかけでした。
最初の2年間は婚礼写真を中心に仕事を受けながら、並行してロンドンのギャラリー「Fold Space」と共同で風景と人物を組み合わせた長期シリーズを制作しました。このプロジェクトを通じて、一枚の写真が持つ時間の厚みについて改めて考えるようになりました。中判デジタルと大判フィルムを意識的に使い分けるようになったのもこの頃です。フィルムの粒子が持つ情報量の豊かさと、デジタルの即応性を、場面に応じて選ぶことが今の仕事の基本になっています。